せやな。

チラ裏なのだけれども、最近チラシ無いので。

オムライスに混入したマヨネーズ

「マヨネーズは味が嫌いすぎて吐いてしまう」と言うと大変驚かれることが多い。「あんなにおいしいのに?」と口を揃えて言うが、断言しよう。マヨネーズがおいしいと思っている人は味覚が狂っている(暴論)

 

 さて、味覚なんて十人十色で、味音痴なんて言葉もあるが、主観でしか判断できないものを他人が批評するなんてナンセンスにもほどがある。

自分の大好物は昔から変わらずオムライスだ。ガーリックライスにとろとろの卵。上からデミグラスソースをかければ完璧だ。

多分、デミグラスソースは2002年放映のランチの女王を子供の頃見たから好きになったんだと思う。ランチの女王では"ドミ"グラスソースなんて言ったかしら?

 

 2002年、ランチの女王を見た後、しばらくはオムライスを母親にお願いすることが多かったと思う。当時小学1年生だろうか。

家で出てくるオムライスはチキンライスだし、ケチャップを掛けるタイプでランチの女王とはかけ離れていたが、それでもオムライスは好きだった。そこから数年間はずっと好物をオムライスと言い続けた。

 おそらく小学4年生あたりの頃、母親はハンバーグにデミグラスソースを使うようになっていた。これに目を付けた僕は、ハンバーグの次の日にオムライスをお願いした。

母親は何度言ってもガーリックライスにはしてくれなかったが、ようやくデミグラスソースを使ってくれた。チキンライスのケチャップが邪魔だったが、それでも当時の自分にとっては最高だったのだ。

 

 しばらくチキンライスにデミグラスソースの黄金タッグで年月が過ぎた。ある日、オムライスを食べると、少し酸っぱい味がした。奇妙だった。卵とデミグラスソースに酸っぱい要素があるはずもない。つまりチキンライスが怪しいと思いチキンライスだけをそっと口に運んだ。どれだけ味わってもケチャップ味だった。陳腐な味だ。決して好きではないが、嫌いでもない。

問題は切り分けることが重要だと、子供の頃から分かっていたのだろう。デミグラスソースだけを口に運んだ。これは期待通り美味しい。最高だ。

なんだ、やっぱりおかしい所なんてないじゃないか。勘違いか。と思い再びオムライスを勢いよく食べ始める。カッ、カッ、カッとまるでどんぶりを食べるスピードの如く、食べ進めるとやっぱり少し酸っぱさがある。明らかに嫌いな味だ。

本来、割って、開いて、混ぜて、薄く焼くだけ。味付けなんてする必要が無い卵。これが怪しいのかもしれない。と感じ始めた。

 卵だけをゆっくり口に運び、ゆっくり咀嚼した。

最悪だった。最悪の味がした。少量だったので、吐きはしないものの間違いなくマヨネーズを感じた。

「お母さん、オムライスにマヨネーズを入れた?」

「入れたわよ、卵のつなぎで。」

訳が分からなかった。生まれてからずっと育てている子供が食わず嫌いでもなんでもなく、ずっと嫌いな食べ物。吐くほど嫌いなのも知っているのにどうして”大好物”のオムライスに混入させることができたのか?

嫌いな食べ物がある人は分かるかもしれないが、もしかしたら嫌いな物が入っているかも?と思う食べ物は警戒しながら食べるのだ。警戒して不味かったら、お茶やスープで流すなど作戦を立ててから食べるのだ。だから嫌いな物を口にしても「やっぱりか・・・」程度で済む。

それが、大好物の無警戒なオムライスに入っていたのだから、不意打ちも良い所だ。トロイの木馬並みの効き目。母親にキレ散らかしたはずだが、キレるよりも前に母親から裏切られたという一点があまりにも悲しすぎて、覚えていない。

 

以降、母親の料理は一口目を警戒するようになったし、オムライスはしばらく好きな食べ物ではなかった。

 

 そして、大人になり、一人暮らしをし始めた一年目。そういえばオムライスが昔好きだったことを思い出した。本当にマヨネーズを入れる必要があったのか、確かめたくて。

必要以上に解いた卵を冷たいフライパンに入れて、ゆっくり火を入れる。

固まったところをすかさず混ぜて、揺らしても液体を感じない、しかし揺れるくらいの塩梅で巻き始める。一回目で大成功した。

デミグラスソースは缶詰で買ってきたし、ガーリックライスなんてニンニクなんだから当然うまい。

初めて作ったマヨネーズレスオムライスは完璧だった。母親はこの努力をしないで、嫌がっているマヨネーズを食べさせたのだ。本物の虐待を知っている人たちには申し訳ないが、ゆとりの時代に育った自分からすれば、虐待と思うほど裏切りだ。

 

当時、マヨネーズをオムライスに入れられたときの絶望的な気持ちは10年以上たっても忘れることは出来ないが、好きな食べ物をオムライスに戻すことができた。